およそ日刊「俳句新空間」
-BLOG俳句新空間‐編集による日替詩歌鑑賞
今までの執筆者:竹岡一郎・仮屋賢一・青山茂根・黒岩徳将・今泉礼奈・佐藤りえ・北川美美・依光陽子・大塚凱・宮﨑莉々香・柳本々々・渡邉美保
2024年4月10日水曜日
DAZZLEHAIKU76[土井探花] 渡邉美保
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花の陰ぼくはゆつくり退化する 土井探花 桜は美しく咲き満ちているのだけれど、樹下はうっすらと影を帯び、蒼ざめていたり、灰色だったりする。花の間から透かし見る空もまた薄青い。人影のまばらな静かな花の陰に坐る、あるいは横たわる。目を瞑る。桜の持つ神秘的な力を浴びながら...
2024年2月27日火曜日
DAZZLEHAIKU75[柴田多鶴子] 渡邉美保
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春を待つ赤肌さらすバクチの木 柴田多鶴子 「これ、バクチの木よ」と教えてもらい驚いたことがある。目の前の高木は、誰かが無理やり樹皮を剥がしたかのように、赤黄色の木肌がむき出しになっている。灰褐色の樹皮は、たえず自然にはがれ落ちるのだという。樹皮あっての幹ではな...
2024年1月23日火曜日
DAZZLEHAIKU74[久保田万太郎] 渡邉美保
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冬の虹湖の底へと退りけり 久保田万太郎 冬の雨のあがった後の空に、思いがけずにかかる虹にはっとすることがある。冬の淡い日ざしにうっすらとかかる虹は、やさしく儚げで、いつまでも心に残る美しさがある。 掲句、前書きに[昭和35年12月1日、その地にくはしき山田抄太郎君に...
2023年10月28日土曜日
DAZZLEHAIKU73[杉山久子] 渡邉美保
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こつとんと月見の舟のすれちがふ 杉山久子 「こつとん」のかそけき音のみが聞こえる。そのあとおとずれる何とも言えぬ静寂な空気。ここは一体どこなのか。 すれ違う月見の舟には誰が乗っているのだろうか。 「月見の舟」という言葉から、中秋の名月か、あるいはその前後。都塵を離れた静かな湖...
2023年8月26日土曜日
DAZZLEHAIKU72[鈴木六林男] 渡邉美保
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海底に未還の者ら八月は 鈴木六林男 「お尋ね申します。トラック島はこっちの方角でしょうか」 小説『姉の島』(村田喜代子著)の一節に、軍服を着た若き幽霊が、海底でアワビ採りをしている海女に、話しかけてきたという場面がある。 「・・・トラック島は日本海軍の基地じゃった。戦後、...
2023年7月26日水曜日
DAZZLEHAIKU71[三好つや子] 渡邉美保
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私を旅する水よ合歓の花 三好つや子 私たちの体のおよそ70%は水でできているそうだ。そして、その水は動いている。絶え間なく流れている。この流れこそが命を支えているという。その水が、まさしく「私を旅する水」なのだろう。 暑い中を帰り来て、よく冷えた一杯の水を飲む。水は...
2023年6月27日火曜日
DAZZLEHAIKU70[山西雅子] 渡邉美保
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水筒の中にゆふやけ子は育つ 山西雅子 夕焼けをたっぷり浴びて帰ってきた子が目に浮かぶ。真っ黒に日焼けした野球少年かもしれない。帰宅した子に手渡される空っぽの水筒。少年のお供の水筒もまた、夕焼けをたっぷり浴びてきたのだ。水筒の中にはまだ夕焼けが詰まっている気配。子供たち...
2023年4月21日金曜日
DAZZLEHAIKU69[森賀まり] 渡邉美保
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空豆を人買ひをれば我も買ふ 森賀まり スーパーの店先に数人が頭を寄せ合っているのが目に入った。大箱の中に空豆がどっさり入っていて、空豆の「詰め放題」だという。どれだけ多く入れようと一袋の値段は変わらないのだ。皆嬉しそうに袋に空豆を詰めている。私も即参加。所定の袋をもらい、...
2023年2月23日木曜日
DAZZLEHAIKU68[小林成子] 渡邉美保
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羽ばたくも潜るも一羽風光る 小林成子 いつも通る散歩コースに小さな川がある。きれいに整備された川ではないので、岸辺には破けたビニール袋やごみ類が溜まっていたりする。川底も決してきれいとは言えない状態なのだけれど、川には、青鷺や白鷺がときおり飛んできて漁をする。いつも見...
2023年1月16日月曜日
DAZZLEHAIKU67[加藤楸邨] 渡邉美保
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その冬木誰も 瞶 ( みつ ) めては去りぬ 加藤楸邨 「その冬木」のことは一切描写されていないのだけれど、読者には読者なりの「その冬木」が目に浮かぶ。 寒空の下、木はすっかり葉を落とし冬らしい姿になっている。木の瘤も顕わになったその冬木は、平然と空に向かって立っ...
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