2015年4月26日日曜日

人外句境 15 [関悦史] / 佐藤りえ


少女みな軍艦にされ姫始  関悦史

『艦隊これくしょん』というブラウザゲームがある。プレイしたことがないので以下、すべて伝聞となる。

ゲームの内容は大日本帝国海軍の艦艇を集め、艦隊を強化しながら敵と戦闘し勝利を目指す、というものである。

これだけ書くと「戦争シミュレーションゲームか」と思われるかもしれないが、このゲームがそういった枠組みに入るのか否か若干の疑問を(プレイしたことがないのにもかかわらず)抱くのは、使用される艦艇が萌えキャラクターとして擬人化された「艦娘(かんむす)」と呼ばれるものだから、である。


長門、陸奥、大和など、戦艦の名前を与えられた彼女たちは、外見上にもととなった戦艦、艦艇の特徴を備えている。ためしにweb検索でこれら戦艦の名前を調べてみると、画像の上位に「船を背負った」みたいな外観の少女の絵が出てくる。それらはきっと「艦娘」だ。

艦娘たちは戦闘に使用されるので、攻撃を受ければ当然破損することもある。「小破以上でアイコンから黒煙が吹き出し、中破以上の状態になるとグラフィックが変化(服が破ける、武装が壊れるなど)」し、耐久力が0になると「轟沈」するらしい。

ちなみにプレイヤーはゲームの中では「提督」という位置づけで、ゲームのために接続するサーバ(複数ある)には、太平洋戦争期の大日本帝国海軍に実在した鎮守府などの名称が与えられている。

「萌え」はそんなものまで包括するのか、と目が点になるものだが、掲句を見てはたと思った。
「軍艦が少女にされている」を「少女が軍艦にされている」と言い換えると、「萌え」で覆われているもやもやした部分が一気に露わになる。

それによって「身近に感じることができる」とは、擬人化の方便のひとつであろう。

なればこそ、艦娘とくりひろげる姫始も想定の範囲内のことではないか。

どっちが受けでどっちが攻めか、といったところまでは、当方はいっさい関知しない。

〈『GANYMEDE』60号/銅林社・2014〉