2015年2月25日水曜日

今日の安井浩司 5  / 竹岡一郎


輝やくも雁の糞もて鎌研げば         安井浩司
この前の句集「空なる芭蕉」においては「雁の空落ちくるものを身籠らん」という、聖的高鳴りの句が見られたが、世の現実に落ち来るのは糞なのである、とは作者の絶望であろう。それでも詩と云う鎌は研げるのである。なぜなら、遙か高みを目指してこれまで来たから。だが、こんなものではない、その無念が「輝やくも」の「も」の一字に籠められている。

<「宇宙開」92頁。>