2014年12月6日土曜日

今日の小川軽舟 22 / 竹岡一郎


がつくりと日の衰へし案山子かな   「近所」
「がつくりと」は、一読では陽光の衰える様なのであるが、そこに案山子を配する事により、上五の形容は衰残の案山子の形容とも見え、更には案山子が荒んでゆくように冬に向かって荒んでゆく秋の日差しをも思わせる。即ち、「がつくりと」は、最初、陽光の形容として用いられ、更に案山子の形容に重なり、最終的には陽光の有様に戻るのであるが、その際、衰えた案山子の如き陽光という比喩にまで連想を拡げるのである。言葉としては繋がっているが意味としては切れている、この「かな」の形式を、余すところなく活用した例である。平成七年作。