2014年12月8日月曜日

身体をよむ 2 [桂信子] 今泉礼奈


月の中透きとほる身をもたずして   桂信子

月の光に透きとおりたいのだろうか。それとも、そんな身を月に申し訳なく思っているのだろうか。月の美しさの前に、どうすることもできない自分を詠んでいる。

桂信子の句には、やはり、夫を亡くした悲しみが底に流れているようなものが多く並ぶ。
この句に漂う悲しみも、月の光では抱えきれないのではないかと、心配だ。

「月の中」と、月に照らされる世界全体をはじめに提示し、そのレンズをぐっと自分の身体へと引きよせる。儚い広がりのある句だ。

(『女身』1955年所収)